…この手紙を受け取って数日後のこと、女子パウロ会のほうから、本書の翻訳の仕事を持ち込まれた。 正義感の盛んな性急な人が爆弾事件を起こす。他方、韓国や東南アジアの国々の貧しい人びとに対して日本が多くの不正をしながら、およそキリストの教えとは違う核の傘とか武力の均衡による平和を説く人のいるとき、粕谷氏も求めているような、ひとりひとりの人を、生産の手段としてではなく、世界中にひとりしかいない、かけがえのない人としてあたたかく、たいせつにすることに無限の価値を見出し、権利を行使し責任を果たすにしても感謝をもって働くことのできる社会をめざし、金では得られない幸福と新しい価値の追求とで一致する、そういうような動きの始まりを願う心で、女子パウロ会編集部の要望にこたえてこの仕事を引き受けた。原稿整理には同編集部のかたがたに大変お世話になったことを付記して、感謝を呈するものである。