アウシュヴィッツ体験が生んだ医学的指導の古典。 生命・死・苦悩・労働の意味をたずね、 個人の独自な生命の発見にみちびく。 この本はアウシュヴィッツの地獄のなかから鍛え出された宝石のような書物である。 人生について、愛について、苦悩について、 著者のことばを辿ってゆくならば、朝明けのような清々しさで この本のもつ方向指示力、その治癒力を感得できるであろう。 1946年、第二次世界大戦の直後にウィーンで出版されたときの反響は驚くばかりだった。 これはフロイトの精神分析いらい、心理療法の世界に出現したもっとも重要な著作となった。 フロイトの「コンプレクス」アドラーの「劣等感」のような心理レベルの現象への逃避に甘んずることなく、 外面的・仮面的なものをのりこえて、人間の意志、その意味への志向に注目する。 すなわち人間の意識性と責任性という二つの根本事実を確認し、勇気と内的な強さを与える。 その豊かな思考方法、深い独創性は弁証法であり、詩的なリズムの文体と相まって、 医師・心理家・教育者などにとって欠くことのできない書物となった。