これまで真の宗教が果たしてきた役割の一つは、人びとの心に畏敬の念をはぐくむことでした。人類史の中で旧約聖書ほどそのために貢献してきた書物はないでしょう。そして「十戒」が、その旧約聖書の中心的道徳律です。 多くの人が「主の祈り」と並んで「十戒」を暗唱してきたのも、そこに理由があるように思われます。 しかし、どんな倫理や道徳も、ただ唱えるだけでは何の力もありません。日常生活の中で、それをどう具体的に適用したらよいか。またそれは何のために与えられたのか。その真意が探られなければ、それはいつのまにか機械的、形式的なものになってしまうでしょう。 この本はそのささやかな試みであり、それらの戒めを実際の生活の土台として生かすにはどうしたらよいかという視点から書かれたものです。 健やかで充足した人生を生きるには、体だけでなく魂も健康でなければなりません。体の健康のためには生活習慣が大事です。つまり食生活や運動、休養の面でのルールをきちんと守ることが求められるのです。魂の健康のためにも同じことが言えるのではないでしょうか。そしてそのために守るべきルールが「十戒」なのです。 「十戒」とは具体的にどのような戒めから成っているのか。またわれわれの精神生活を健全なものにするために、それらがどんなに有効であるか。そのことをぜひもっと多くの人に、とくに若い世代の人に知っていただきたい。そのためにこの本が少しでもお役に立てば、こんなにうれしいことはありません。 ―モーセの十戒に学ぶ生き方― 著者 米村英二 大津キリスト教会牧師(熊本県) 発行/大津キリスト教会 装画:戸田みどり 第 一 章 神への畏敬 1 二種類の法則 2 神への義務と人への義務 3 畏敬とは何か 4 畏敬の念をはぐくむもの 5 キリスト教の神観の特色 第 二 章 まことの神を神とする 1 偶像を造るとは 2 偶像からの解放 3 神のほか恐れるものは何もない 4 偶像礼拝の弊害 5 親への義務を越えて 第 三 章 主の御名を尊ぶ 1 神の名が記されているもの 2 神の名が記された指導者 3 主の御名を利用するのではなく 第 四 章 安息日の意味するもの 1 寛容な法律 2 持つことから在ることへ 3 安息日と旅 4 安息日と習慣 第 五 章 父と母を敬う 1 親への感謝 2 親との確執 3 反抗か服従か 4 ジレンマの克服 第 六 章 命の大切さ 1 ささげられる命 2 命はだれのものか 3 公人として人を見る 第 七 章 家庭の神聖 1 家庭とは何か 2 家庭をその破壊から守る 3 家庭を建設するには 第 八 章「盗んではならない」が問うもの 1「盗んではならない」とは 2 不正はないかと自らに問う 3 不正の産物である 第 九 章 真実に生きる 1 真実を語ることの困難 2 真実な言葉は真実な心から 3 神を真実とする 第 一〇 章 むさぼってはならない 1 行為ではなく、欲求を問う 2 貪欲がもたらすもの 3 貪欲から解放されるには 4 モーロワの教訓




