わが国は現在、2030年代には人口の3人に1人が65歳以上になるという、世界的にも未踏の超高齢社会へと向かっている。長寿という恩恵は、私たちの生活に幸福ばかりでなく多くの困難ももたらすだろう。そのひとつとして危惧されるのが、認知症患者の増加である。 「認知症」はひとつの病気を指しているのではない。認知にかかわる障害、その状態の総称を指しているにすぎない。では、どの認知症は回復可能で、どの認知症はそうでないのか。誰にでも思い当たる「もの忘れ」と、アルツハイマー病はどう見分ければいいのか? 本書では、脳の疾患やうつ病、薬剤の副作用など一見認知症にみえる老年期特有の問題と、認知症との鑑別に多くの章が割かれている。誤解されがちな「認知症」の実態がよく理解されるだろう。 また、認知症は医学分野だけの問題ではない。認知症患者の介護の問題や、高齢期に頻繁に起こる転倒の問題、そして終末期の意思決定の問題など、高齢者の生活上のリスクを幅広く解説し、家族や援助職の人々がとりうる対応策を示す。 米国の看護学のエキスパートが、高齢者と家族が安心して生活するための知識とヒントをまとめる。当事者から援助者まで、なによりも“ふつうの老化”をよく理解し、高齢者の異変を見逃さないための一冊である。